思い込みについて考えるきっかけをくれたおじいさん
あれは確か私が小学校高学年の頃![]()
学校の帰り道、
自動販売機の前で止まっているおじいさん
がいました。

おじいさんは車いすに乗っていたので、
ボタンが押せず困っていたようです。
私が
「お手伝いしましょうか?」
と声をかけると、
少し頷いて
手に持っていた千円札を私に渡しました。
「これで買えばいいのかな」
と思い、自販機に千円札を入れました。
「どれにしますか?」
と聞くと、
おじいさんは
「あー、あー、」
と言いながら自販機の上の方を指さしました。
おじいさんはあまりスムーズに声が出ないようで、
話すのが少しつらそうでした。
そのようなおじいさんの様子を見た私は
思い込みスイッチを発動させてしまったのです![]()
・車いすに乗っている
・年配。おじいさん
・話すことが簡単ではなさそう
この条件で、飲み物の候補を
お水かお茶かコーヒーあたりだろう。
と当たりをつけたのです。
しかしながら、おじいさんが指さす方を見ると、
そのどれにも当てはまらないものが並んでいました。
いやいや、おじいさん、
これは飲まないよな…![]()
おじいさん今までに飲んだことあるのかな?
そんな余計なことを考えながら
おじいさんが指さす辺りの飲み物を
「これですか?」
「こっちですか?」
と私も指さしながら確認していったんです。
ある飲み物を指したとき、
おじいさんが
「あー、あー」
と言いながら少しうなづいてくれました。
それは私が想像に及ばなかったもの。
コカ・コーラでした。
「えっ
!?これ?」
と心の中でビックリしました。
「いや、きっと間違いだよな。
シュワシュワで喉痛くなっちゃうかもしれないし、
甘いし…」
と本当に余計なお世話なんですが、
心配になってしまって、戸惑った私。
しつこく3-4回
「こ、これですか?これでいいんですね?本当にこれですね?」
と確認してしまいました。
もしかしたら、「そうだよ、それだよ。早く買ってくれよ。」
と思ったかもしれませんが、
思い込み発動中の失礼な小学生相手に
おじいさんは
何度も頷きながら反応してくれました。
半信半疑でボタンを押した私。
出てきたコーラとおつりを渡すと、
おじいさんは少しほっとしたような表情で、
会釈しながら
「ありがとう
」
と言ってくれました。
はっきりした「ありがとう」ではなかったけれど、
私にはちゃんと「ありがとう」に聞こえました。
この時に、私思ったんです。
勝手な思い込みや、独断、偏見、先入観…
そういったものは判断を狭めてしまう、と。
今思うと、本当に大事なことを教えてくれたおじいさん。
まだ元気かな。
あの頃既におじいさんだったから、
もしかしたらもう天国かな…
・・・なんてことは分かりません!
これも思い込みですから。
だって実際の歳も聞いていないし、
もしかしたら日本最高齢になっているかもしれない。
もう数十年も前の話だけれど、
小学生の私には衝撃的で、素敵な出会いだったので、
今でも場所や状況を鮮明に覚えています。
おじいさん、ありがとう![]()


